運命の航路

2012年5月11日

人間に降りかかってくる不幸な運命というものは、
苦難の荒波の中で私たちを運んでいく船のようなものです。
この航海では、もはや人は舵を取ることはできません。
舵を取っているのは、その「運命」─宇宙そのもの─だからです。
激しい荒波の上では、自分で船を自由に操縦することはできません。
人は荒波にもまれながら、どこへ行き着くとも知れないまま運ばれるだけです。

この運命の航路に、選択の余地はありません。
人はもう抗することのできない宇宙の絶大な働きかけによって荒波の海へと投げ出されたのです。
自分で望んで航海を始めたのではなく、強制的に始めさせられたのです。運命の力によって。
自分の意志で荒波を静めることも、船を元の地へ戻すこともできません。
ただ荒波に運ばれるままに、その手を運命にゆだねて運ばれるしかありません。
この先どうなるのか、どこへ行き着くのかもわかりません。
自分が望んでいなくとも、強制的にこの苦難の航海に出なければならないのであり、
それがその人に与えられた運命、進まなければならない生です。

荒波は船を運び、新しい大地へと向かわせるでしょう。
その道程には、もう「自分の意志」「自分の選択」「自分の希望」というものはなく、
また「自分が生きたい生」というものもありません。
荒波に投げ出され、舵が効かない船には、もうどんな自由な力もありません。

そこにあるのは「自分が望む生」ではなく、宇宙が望む生です。
自分が望む大地にたどり着くことではなく、宇宙が運ぶ大地にたどり着くということ、
自分が望む人間になることではなく、宇宙が望む人間になるということです。
運命が、人間の意志や希望とは関わりなくその人を強いて運んでいき、
思いもよらない地へと、まったく新しい生へと進ませるのです。


Trackback URL

http://spiritual-public-foundation.org/message/2656/trackback


世界を変える