死という現実

2012年4月9日

人間は死を恐れます。
「死」という現実は、私たちにとってとても大きな出来事です。
それはあまりに大きく、そしてあまりに生々しくリアリティに溢れているので、
普段は逆にその現実感をなかなか感じることができません。

しかし、死は現実です。それは間違いのない厳然たる現実です。
その現実はやがて必ず私たちのもとにやってきます。
「死」という現実は生命の厳粛な摂理であり、誰もその宿命から逃れることはできません。
人として生きている以上、私たちはこの「死」という現実と向かい合わなければなりません。

私たちの多くは死というものを恐れています。
意識的であれ無意識的であれ私たちは死を恐れています。
この死という現実と向かい合おうとせず、むしろ死から目を背け、死を見まいとします。
死は恐ろしいもの、忌むべきものであり、
その現実に直面したくないがために心は絶えず逃げ続けています。
しかしながら、死は全き現実であり、誰もそこから逃れられません。

死から目を背けることは、現実から目を背けることです。
死から逃げようとすることは、現実から逃げようとすることです。
現実から目を背けるところに、真実はありません。
死から目を背けているかぎり、死への恐れはそこにあるでしょう。

死を恐れ続けて生きるならば、そこには心の自由は決してありません。
心は常に死の恐怖に縛られたままなので、
人はいつも不安を抱えながら人生を歩むことになるでしょう。
そのような生は苦痛であり、重荷であり、なんら自由のないものです。

死という現実と向き合う必要があります。
その現実と向き合い、それを受け入れることによってのみ、
私たちは徐々に死というものと融和するのです。
逃れられない運命をそのまま受け入れるということ。
この態度こそ英知ある態度であり、この諦念こそ心を自由にさせます。

死に怯えるのではなく、死というものと共に生を歩めるならば、
人は死への恐怖を持つことなく生きることができるでしょう。


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