何も失わない心

2011年8月29日

人の心は、何かに執着することで苦しみます。

人は自分の心の支えとなるものや、

自分に満足や喜びを与えてくれるものに執着します。

 

何かに執着している精神というのは、常に恐怖を持ちます。

自分の心の支えを失うことに怯えているのです。

しかし、どんな心の対象であっても、永続し続けるものはありません。

それらはやがて失われるものです。

それが決定的となるのは、死という現実です。

 

どんな幸福であれ、満足であれ、喜び溢れる経験であれ、

心がそれらを所有している限り、恐怖はそこにあるでしょう。

恐怖とは、自分が掴んでいる心の支えを失うことに対する反応だからです。

 

何かを得ると、それを失うことに対する恐怖が生まれ、

何かを失うと、悲嘆や絶望という心の苦しみが待ち受けています。

人間の心の運動とは、結局のところこの繰り返しであり、

この枠組そのものを打破しなければ、いつまでも堂々巡りするだけです。

 

何も失うことのない心とは、何も望まず、何も持たない心です。

その心は何ものも保持しないがゆえに、何も失うことがありません。

そのとき心は空(くう)であり、この空が自由なる心です。

 

心が何ものにも依存せず、ただ空っぽであるとき、

そこには恐怖も葛藤もありません。

絶え間ない心の闘争を終わらせるのは、この空の心です。

 

空であるとき、何も得るものも失うものもありません。

何もないからこそ自由であり、

それこそ無限の可能性に開かれている心のあり方です。


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