自己達成への欲望

2011年10月25日


人間の心は「こうありたい」という欲望を持ちます。
自分の理想、自己実現への欲求です。

人の心が持つ自己達成への欲望の根には、常に恐怖があります。
人の心が恐れているのは「何もない自分」です。
つまり、「無でしかない自分」への恐れです。

空虚な自分、空っぽの自分に耐えることができず、
絶えず自己実現と自己達成を求める心の動きは、
その根の恐怖によって突き動かされています。

恐怖がある限り、心の平安はありえません。
自己達成を実現したとしても、
今度はその自己達成した「自分」というものを失うことを恐れ、
また新しい恐怖を作り上げてしまうだけです。

自己に固執することは、
同時に恐怖や不安、悲しみや葛藤を生み出すことです。
そのような心の苦しみ、心の混乱なく生きるためには、
自己に固執することを放棄しなければなりません。

自己の完全放棄だけが、心の自由をもたらします。
恐怖、不安、葛藤―心の混乱のない生とは、
自己を持たない生き方、無私の生き方であり、
もはや「自分のもの」は何ものも求めない生です。

心の完全な自由は、自己を放棄し、無にすることにあります。


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